「源泉所得税の告知分って何のこと?」
「告知分の納付期限を過ぎてしまったらどうなるの?」
給与の支払いを行う事業主の方なら、このような疑問をお持ちではないでしょうか。
源泉所得税の告知分とは、本来納付すべき源泉所得税について、期限内に納付されなかった場合に税務署から通知される納付すべき税額のことを指します。つまり、給与の支払い時に源泉徴収をし忘れたり、計算を誤ったりして、納付すべき税額が未納となっていた場合などに発生します。
もし告知分の納付期限を過ぎてしまうと、延滞税や不納付加算税といったペナルティが課されるリスクがあります。しかし、そもそも告知分とはどのようなものなのか、なぜ発生するのか、どのように対処すべきなのか、具体的なイメージがつかない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、源泉所得税の告知分について、基本的な仕組みから発生原因、納付方法、注意点など、事業主の方が知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。正しい理解と適切な対処方法を身につけて、ペナルティのリスクを回避しましょう。
源泉所得税の基本
源泉所得税とは
源泉所得税とは、所得税の納付方法の一つで、給与や報酬などを支払う際に、支払者が受給者に代わって所得税を天引きし、税務署に納付する制度のことです。つまり、給与などの支払いを受ける側は、すでに所得税が差し引かれた金額を受け取ることになります。
この制度は、所得税の納税を確実に行うことを目的としており、受給者の納税手続きの負担を軽減する役割も果たしています。源泉徴収の対象となる所得には、給与や報酬の他にも、利子、配当、賞金などが含まれます。
源泉所得税の計算や納付は、支払者側の義務となっています。毎月の給与支払い時に源泉徴収し、翌月10日までに前月分の源泉所得税を納付します。年末には、1年間の源泉徴収の状況を「法定調書合計表」にまとめて、税務署に提出する必要があるのです。
自主納付分と告知分の違い
源泉所得税には、自主納付分と告知分の2種類があります。自主納付分は、支払者が毎月の給与支払い時に源泉徴収し、自主的に納付するもので、多くの場合はこの自主納付分に該当します。
一方、告知分は、本来徴収すべき所得税を徴収しなかったり、納付すべき税額を納付しなかったりした場合に、税務署長から納税の告知を受けて納付するものです。つまり、自主的に納めるべき税金を納めなかった場合に、税務署から納付を求められるわけですね。
告知分が発生する主な原因としては、源泉徴収の計算誤りや、納付期限までに納付しなかったケースなどが考えられます。このような告知分については、本税に加えて、加算税や延滞税なども合わせて納付しなければならないので注意が必要となります。
告知分の詳細
告知分とは何か
国税通則法第36条では、納税の告知について規定されています。納税の告知とは、税務署長が、自主的に納付されなかった税金について、納税者に対して納付すべき税額などを通知し、納付を求めることをいいます。
源泉所得税に関していえば、本来は支払者が毎月の給与などの支払い時に源泉徴収し、翌月10日までに前月分を納付しなければなりません。ところが、何らかの理由でこれが行われなかった場合、税務署長は支払者に対して納税の告知を行います。この告知により納付を求められる源泉所得税が、いわゆる告知分ということになります。
つまり、告知分の源泉所得税は、本来の納期限までに納付されなかった税金であり、税務署からの指摘によって初めて納付されるものなのです。通常の自主納付分とは異なり、告知分については、納税の告知を受けた日から起算して10日以内に納付しなければならないという点にも注意が必要です。
告知分が発生するケース
告知分の源泉所得税が発生するケースとしては、大きく分けて以下の3つが考えられます。
1つ目は、源泉徴収すべき所得税を徴収しなかった場合です。例えば、給与の支払い時に源泉徴収を行わなかったり、源泉徴収税額の計算を誤ったりした場合などが該当します。
2つ目は、源泉徴収はしたものの、納付期限までに納付しなかった場合です。源泉徴収した税金は、翌月10日までに税務署に納付しなければなりませんが、うっかり納付を忘れてしまったようなケースがこれに当たります。
3つ目は、年末調整の際に、過大な還付金を受給者に支給してしまった場合です。年末調整で計算誤りがあり、本来は還付しすぎている金額について、追加で源泉所得税を納付する必要が生じることがあります。
このように、源泉徴収義務者である支払者側の何らかの手続き上の誤りや不履行が原因で、告知分の源泉所得税が発生するケースが多いようですね。
告知分の納付方法
電子納税の手順
告知分の源泉所得税については、e-Taxを利用した電子納税で納付することができます。具体的な手順としては、まずe-Tax上で納付情報登録依頼データを作成し、送信します。
納付情報登録メニューから、「納付情報登録依頼」→「新規作成」と進み、税目欄で「源泉所得税(告知分)」または「源泉所得税及復興特別所得税(告知分)」を選択します。必要事項を入力して作成したデータをe-Taxに送信します。
送信後、メッセージボックスに「受信通知(手続名)」が格納されるので、その内容に従って電子納税を進めます。受信通知に記載された納付情報を確認し、最後に納付を実行すれば、電子納税の手続きは完了です。
なお、電子納税を利用するためには、事前にe-Taxへの利用者登録と電子証明書の取得が必要となります。普段からe-Taxを利用している方は、そのまま告知分の納付に利用できますが、初めて利用する場合は、まず利用者登録などの準備から始める必要があるでしょう。
クレジットカード納付の利用
2017年1月以降、国税のクレジットカード納付が可能となり、告知分の源泉所得税もクレジットカードで納付できるようになりました。従来は、主に金融機関の窓口やATMでの納付が一般的でしたが、クレジットカード納付の導入により、納税者の利便性が大きく向上したといえます。
クレジットカード納付を利用する際は、事前に国税庁のWebサイトから専用の納付用QRコードを作成します。このQRコードをスマートフォンやタブレット端末で表示し、コンビニエンスストアのキオスク端末で読み取ることで、納付情報が入力されます。
後は、キオスク端末から出力される払込票に現金を添えてレジで支払えば完了です。クレジットカードのポイントも付与されるので、お得に納税できるメリットもあります。
ただし、クレジットカード納付には上限額があり、1回あたりの納付額が30万円以下の場合に利用可能です。また、QRコードの有効期限は作成から1ヶ月程度と短めなので、計画的に納付手続きを進める必要があります。
告知分の注意点
納付期限と延滞税
告知分の源泉所得税の納付期限は、納税の告知を受けた日から起算して10日以内とされています。この期限を過ぎると、延滞税が発生してしまうので注意が必要です。
延滞税とは、納期限までに納付しなかった税金に対して課される利息のようなものです。告知分の源泉所得税の場合、年14.6%(納期限の翌日から1ヶ月を経過する日まで)または年7.3%(納期限の翌日から1ヶ月を経過した後)の割合で計算されます。
つまり、納付が遅れれば遅れるほど、延滞税の額も大きくなってしまうわけです。できるだけ早めに納付手続きを済ませ、延滞税の発生を避けるようにしましょう。
なお、災害その他やむを得ない理由によって納付が遅れた場合は、税務署長の承認を得て、延滞税が免除されることもあります。事情があって納付が難しい場合は、早めに税務署に相談するのが賢明でしょう。
不納付加算税のリスク
告知分の源泉所得税を法定納期限までに納付しなかった場合、延滞税に加えて、不納付加算税が課されるリスクもあります。不納付加算税は、納付すべき税額に対して10%または15%の割合で計算されるものです。
通常は納付すべき税額の10%ですが、過去5年以内に期限内納付をしなかったことがあるなど、一定の要件に該当する場合は、15%に引き上げられてしまいます。つまり、単に納付が遅れるだけでなく、追加的なペナルティを課されてしまうわけですね。
さらに、不納付加算税は、正当な理由がない限り免除されることはありません。災害などのやむを得ない事情で延滞税が免除されたとしても、不納付加算税は課税される点には注意が必要です。
告知分の源泉所得税の納付の際は、このような不納付加算税のリスクも念頭に置きつつ、納付期限を厳守するよう心がけましょう。万が一、納付期限までに間に合わないことが予想される場合は、早めに税務署に相談し、適切な指示を仰ぐことが大切ですよ。
源泉所得税の告知分とは何かのまとめ
源泉所得税の告知分について理解を深めていただけたでしょうか。告知分とは、本来納付すべき源泉所得税が期限内に納められなかった場合に、税務署長から通知される納付税額のことを指します。主な発生原因としては、源泉徴収の計算誤りや納付漏れなどが挙げられます。
告知分の納付には、e-Taxを利用した電子納税やクレジットカード納付などの方法があります。ただし、納付期限は告知を受けてから10日以内と短いので注意が必要です。期限を過ぎると延滞税や不納付加算税が課されるリスクがあるからです。
源泉所得税の告知分は、適切な手続きと期限内の納付を心がけることで、ペナルティを避けることができます。日頃から源泉徴収事務をしっかりと行い、万が一告知を受けた際は速やかに対処するようにしましょう。
項目 | 説明 |
---|---|
告知分とは | 本来納付すべき源泉所得税が期限内に納付されなかった場合に通知される納付税額 |
主な発生原因 | 源泉徴収の計算誤り、納付漏れなど |
納付方法 | 電子納税(e-Tax)、クレジットカード納付など |
納付期限 | 告知を受けてから10日以内 |
納付遅延のリスク | 延滞税、不納付加算税の発生 |
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